おしゃべりな指先に

「もしもピアノが弾けたなら」というタイトルの曲があるけれど、わたしも子供のころからピアノを弾きたいと憧れていました。
それで大人になってから中古ピアノを手に入れたことがあります。

理想ではショパンを弾きたかったのですが、ドミソを三本の指で抑えるという簡単なところでまさかの大苦戦。
理想と現実は違いますね。
もっと指が動いたら。この音に感情を乗せられたらどんなに素敵だろう。そう思いつつも、順番に動かすだけで精一杯で・・・
未だにショパンに届いていません。

あのときわたしの指は雄弁にはなれませんでした。
でも思うのです。楽しいとき、笑うとき、いつもわたしの手は忙しい。指先は雄弁に感情を表現する場所なんですね。

音楽はしばらく保留にしましたが、わたしの手は表現することをやめません。
おしゃべりな指先にほんの少しエールを。そんな思いを込めて日々のお手入れを楽しんでいます。

記事/月野みちえ

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